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区画整理地区の広幅員道路 [都市計画]

 埼玉県和光市の区画整理地区。住宅地区になっており、中央部を貫通する道路幅員が約18 m(車道は約8m)と非常に広い。交通量は少なく、ときおり車が通るくらいで閑散としている。
その道路が周辺の既存道路と接続する部分は、既存道路との幅員合わせのためと思うが、幅員を絞るための幅広のゼブラが設けられている。
 そもそもなぜこんなに広い道路としたのか?現在の交通量としてはまったく不要である。道路がこんなに広くなければ、減歩率も下がったはずだ。広大なゼブラは単に無駄なスペースになっており、景観上もよくない。おそらく将来は外環からつながる幹線系道路とする計画なのだろうが、それも不必要に通過交通を誘発し、地域にとってはディメリットのほうが大きい。自動車交通問題を解決するための区画整理の時代はもう終わろうとしており、ましてやこの住宅地でこれはないだろう。

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坂和弁護士「都市計画制度の疲労と今後の展望」講演概要 [都市計画]

「まちづくりの法律がわかる本」を著された、坂和章平弁護士の講演を中心とした、比較住宅都市研究会に参加した。以下は講演の超概要。
(以下の文章は筆者が聞き取ったものをまとめたものであり、坂和弁護士の確認は取っていません。筆者の誤認である可能性があることに留意して下さい)

【50年を単位とした概観】
 今年は明治150年になるが、だいたい50年ずつ区切ると、社会の変化と都市計画の流れが見えてくる。
1868- 明治維新、近代国家形成の創始期。
1919- 旧都市計画法、大正デモクラシーから戦争、そして戦後復興へ。
1968- 新都市計画法、人口激増、高度経済成長、都市化と郊外スプロールへの対策。
 成長が当然の、ある意味幸せな時代。
2018- 人口減少、コンパクトシティへ。都市計画の制度疲労が生じている。
市街化区域の削減、空き地や空き家の増加。

【都市計画の制度疲労と対策】
 これから「母なる法」の都市計画法は、その枠組みは残るが実質消えていくのではないか。都市再生特別措置法や国土強靭化関連法などが取って代わる方向に。都市再生緊急整備地域に指定されれば、 なんでもありという状況になっている。今までは住民合意といっていたが、都心部には住民はなく企業のみ。どんどん拡大して特別措置法のオンパレードになっている。
 特措法の積極面として、国際競争のなかで、東京を国際金融都市とするため、国としても資金投下を集中していくというものがある。大阪では民間投資中心になっている。
 これからは特措法と国土強靭化関係法の影響が大きくなる。
 都市計画関係法制度の基本的な枠組みを大きく変える必要はない。
 日本では政権が変わらないので官僚も変わらない。そのため政策に継続性があるが、変わるのとどっちがよいのか。経済問題と都市計画をセットで考えている。
 今後は、都市計画契約的なものがでてくるのではないか。
 開発利益をどう捉えるか。固定資産税があがることではなく生産緑地が増えることが開発利益ともいえるか。
 同じ制度でも立場や見方によって評価は異なる。

【コンパクトシティ】
 これからは全国でコンパクトシティ、スポンジ化対策が進められている。線引き制度はあってもよいが、市街化区域の縮小が必要。
 立地適正化計画は100くらいの自治体が作った。コンパクトシティ一色で、中心部に都市機能を集約し、それに対して国が補助金出すというしくみ。その裏返しとして居住抑制地域を指定する。線引き、調整区域は守るはずが、なし崩しになっている。強制移住はできないし、誘導もお金かかるので、「なるべく移りましょうね」となっている。
 コンパクトシティに反対の人はいない。しかし居住抑制区域に住んでいる人に野垂れ死にOKとはいえないので、やや中途半端な状態。
 両親亡くなった後の郊外の実家をどうするか。原則として市街地を集約すべきだが、これまではそこに国は介入しなかった。空き地を放置しておく自由を認めないことは基本はよいことだが、行政の介入はどこまでか。現在、空き地、所有者不明土地は九州くらいの面積がある。相続のとき登記しないで放置されているものも多く、相続登記を義務付けるか。
 生産緑地法の改正、2022問題については、かつては農地を守るための生産緑地であり免税措置を講じた。30年経て、農地で残そうという方向になっている。今は市街地拡大の必要なし。 

【住民参加型都市計画・まちづくり・合意形成】
 住民参加型の都市計画は、その地域の住民に相当の知識や経験の蓄積がないと難しい。
 日本では公共の概念が低いことは課題。その裏腹として個人の権利主張が強い。土地取引で儲かるのがわかっているならみんなそうする。それが公共の福祉に資するかは誰もかまわない。
 東日本大震災のような広い面積の復興を短期間でどうするか?津波対策として高台移転はあるが、万里長城のような防潮堤は意味がない。逃げる体制をどうするかが根本。復興試案では大規模な高台移転はナンセンスと思う。しかし官僚機構とすれば復興庁などをつくり対策をやっておけば、国民からの批判は少ないという意識がある。復興需要が問題にもなり、土建国家的体質は残っている。過疎化が進んでいた津波被災地で区画整理やっても意味がない。
 阪神大震災では被災地が都市部で、復興の基礎となる知的レベルがあり、具体の地元提案や修正案があったところがうまく行った。法定再開発、区画整理の規模は比較的小さかった。
 東北では、経験の無い住民にはいきなりまちづくりできない。月に1回くらい東京から専門家が来る程度ではダメ。住民参加の実態分析が必要。住民参加はマジックワードだが、その中味や住民の能力はどうか?
 大阪都構想では住民投票が行われたが、実際その意味が分かる住民レベルか、判断力があるか?直接民主主義はどこまで機能するか。地区計画の提案制度も、提案できる住民能力があるか?阪神淡路震災復興ではまちづくり協議会に能力があった(ところがうまくいった)。

【景観法関係】
 景観法は、美しい日本をつくろうという声のもと安部政権1期目のときにできた。そのときは外国人観光客を1000万人以上呼ぶというのは実現できないのではと思われたが、中国の経済発展のおかげで達成できた。
 景観法で景観地区の指定は、制限が強いので誰もやらないだろうと思っていたが、芦屋が全市を指定した。他にはない。景観形成地区はどこでもやる。日本では、景観法、景観地区は使いこなせない。  芦屋はリスクを犯してやった。京都の景観条例もすごい。行政が本気になればできる。マンション業者もそれに合わせたほうが得という感覚でつきあっている。

坂和弁護士は率直大胆な語り口で、わかりやすく大変おもしろかった。また都市問題に取り組むに際して弁護士と都市プランナーの基本スタンスの違いのようなものが感じられ、興味深かった。

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大久保通り(都道放射25号線)拡幅問題 [都市計画]

神楽坂の中央部を通る大久保通り(都道放射25号線)拡幅について、1/7のTBSテレビ「噂の東京チャンネル」で放送されました。私は神楽坂で都市計画・デザイン事務所を運営しており、まちづくりに係わっているNPO粋なまちづくり倶楽部の副理事長であることから、地元関係者の一人として取材を受けました。数分お話し、実際にテレビに映ったのは10秒程度でしたが、それはともかくとして。

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大久保通り拡幅の現地で取材の様子。

都の計画では、現在は片側1車線・幅員18mのところ、片側2車線・幅員30mになります。この計画ができたのは戦後の昭和21年、東京が焼け野原となりその復興の姿として描かれたものです。その後、社会情勢は大きく変わりました。大久保通りの地下には地下鉄大江戸線が開業し、その自動車通行量はピーク時に比べて30%以上減少(センサスデータによる)しています。都内では自動車保有台数も減ってきています。

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建物が除却された、神楽坂交差点付近

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計画を表現した模型

 番組では、東京オリンピックを理由として眠っていた道路整備が進められることについての疑問、商店街の分断への懸念、立ち退かざるを得なかった人々がお気の毒であること、大久保通りの交通量が減っていることなどが報じられました。

 一方、道路整備にはこれから非常に長期間を要し(現在の用地取得率は10%)、その間は道路予定地は金網囲いの空き地とされること(区の協力があれば有効活用の可能性あり)、道路整備と沿道地区まちづくりがまったくリンクしていないことなどは報じられませんでした。

 放送では、大久保通り整備の理由として、都の回答として「都心部の道路(目白通り、外堀通りなど)通行の円滑化」が挙げられていましたが、都心主要道路の通行量も近年は横ばいか漸減傾向にあります(下図)。
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 放射25号線で、後楽園方面から神楽坂近くに至る整備、開通済み部分は、人も車もまばらな状況です。少数の通過交通に快適なだけで、地域を分断しています。これが21世紀の東京のあるべき姿とは、とても思えません。
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 自動車通行のための道路整備は既に大義を失っているのに、都市計画決定済みだから、事業認可されたからという理由で、時代が変化しているのに省みることなく進められています。しかも都市計画決定されているのはルートと全体幅員のみで、その内訳、すなわち道路空間の使い方~歩道や車道の配分など~は事業計画変更で可能なのです。将来の人々に恥ずかしくない公共資産として、道路空間の整備や使い方を見直すべきです。


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伊香保温泉都市計画 [都市計画]

群馬県の伊香保温泉、365段(実際はさらにある)の石段街の中ほどに「我国温泉都市計画第一号」という石碑が設けられている。これは、現在の都市計画法に基づく都市計画という意味ではないが、温泉を活かしたまちづくりという意味では大変興味深く、画期的といえる。このような、地域資源を活かし振興につながる計画こそ本来の都市計画と言うべきだろう。

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以下、「渋川伊香保温泉観光協会ホームページ」より要約。

「天正4年(1576年)、郷土であった7氏が湯元から現在地に集落を移し、伊香保の石段街を作った。湯元から温泉を引き、石段を作り、中央に湯桶を伏せ左右に調整、区画された屋敷に湯を分けるという日本初の温泉リゾート都市計画であった。
 昭和30年代、大型バスの団体旅行客の来訪が増え、その対応のため、境沢地区の町有地を民間に開放して新温泉街を建設造成する計画が立てられた。この土地は希望者に分譲する形を取ったので、異業種からの旅館参入が増加した。こうした取り組みは温泉地としては最初であり、旅館経営を希望する人が多くなったため、昭和39年には抽選で旅館経営の許可が出されることとなり、これは「大伊香保計画」と呼ばれた。」

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ジェイン・ジェイコブス生誕100周年記念シンポジウム 早稲田大学 [都市計画]

7/16(土)、早稲田大学でジェイン・ジェイコブス生誕100年記念シンポジウムが行われました。講演と報告が合計5題、その後、会場との質疑を含めたパネルディスカッションがありました。私は司会進行を担当し、パネルにも加わりました。今回は経済面からの論題が多く、パネルでは私ひとりが都市プランナーあるいはまちづくり活動実践者という感じになり、自然とその方面を擁護するような発言となりました。延べ5時間以上の長丁場で、参加者の皆様おつかれさまでした。主な論点は以下の通り(鈴木の私的な整理)で、総じては、ジェイン・ジェイコブスから学ぶべきことは多方面にわたり、まだまだ非常に多いということです。

・都市経済は複雑系として進化するものであり、それにふさわしい設計、成長戦略が必要。
・地域の成長のためには、母集団を適切な大きさに分割する必要がある。
・直列型戦略と並列型戦略があり、複雑系の時代には並列型とすることが効果的。
・日本の会社のダイバーシティマネジメントは、受身の対策になっている。
・ジェイコブスは都市の多様性、複雑性が発展の基盤と考えた。進化を制御するのではなく、多様性を活かすことが必要。

・ジェイコブスは、都市機能の合理的純化論、それによる都市文明を批判した。
・新産業の創出が軸。地域の技術と人材が重要な資源。
・現在は第4次産業革命と都市再生の時代。
・都市はデジタル拠点、グローバルなデジタルハブとしての機能が重要になる。
・新しい創業者の時代になっており、既存の中小企業はビジネスモデルを根本的に変えるべき。
・知識は統合的、分析的、象徴的の3類型となり、それを3つの角におき、主要産業を位置づける。その図によって地域産業の立地特性がわかり、それが都市計画にも役立つ。

・ジェイコブスは、中小企業は都市の多様性を生み出す源泉とした。中小企業は都市的現象である。中小企業が存在することが都市に多様性を与える
・都市の多様性がイノベーションを生み出す。都市の発展はイノベーションが持続的に生み出されることによってもたらされ、それができなくなったときに都市は衰退する
・成功する中小企業とそうでないものの差は、シーズ発想か、ニーズ発想かによる。
・シリコンバレーの企業は小規模、フラットな形態を保ったことが、ITの勝利者となった要因(サクセニアン論文)

・イノベーションは特定の地域でしか起きていない。イノベーションフレンドリーな地域とはどういう条件か、どういう条件なら新産業が起きるのか。国や地域の発展はイノベーションの持続性にかかっている。
・イノベーションはどうやって起きるのか?ポイントは差別化と市場性。
・新製品開発には暗黙知が多く、それはネットでは語れないので、地域への集積が重要。
・産業の集積理由は、固有の労働者、補助産業、知識が地域に集積していること。

・ジェイコブスの都市論の価値基準として、「都市コミュニティの安定性と継続性」、「見知らぬ人々がお互い干渉せずに生活」、「空間特性と社会特性の多様性を尊重」、「都市の発展のダイナミズムを尊重」。
・ジェイコブスの方法論としては観察が最大の特徴であり、地域の協働により実践し、非計画的な猥雑性、元からある生活環境を守り、ヒューマンスケールを大事にする。住民はまちづくりの政治プロセスを選択する主体である。

以下は、パネルディスカッションにおける鈴木の発言要旨。
・上位機関による鳥瞰的都市計画は行き詰まっており、コミュニティが都市計画、まちづくりの主体となるべきことは明らか。地域の声をよく聴き、それに寄り添うことがプランナーに求められており、そのように実践している人も多い。
・ジェイコブスの「4原則」は、そのような実践の立場からは、もはや当然のこととして捉えられる。ジェイコブスはそのことをはじめて体系的に、分かりやすく、シンプルに提言した。発表されたのは50年以上前と古くてもいまだに新鮮な知見である。
・日本の都市計画制度やプロセスにおいては、公開の場で全うな議論がなされない。そのため記録が残らず知見の蓄積や反省がなされない。日本人の社会性や国民性も関係するが、もっとオープンな議論が必要。そのためにはコミュニティ主体で、ひとりひとりが小さなジェインとして発言、行動することが大切。

対談「コンパクトシティは実現するか?」を聴講して [都市計画]

1月9日、東京大学にて行われた、NPO都市計画家協会主催 中村文彦(横浜国立大学教授、交通計画)×小泉秀樹(東京大学教授、都市計画)対談「コンパクトシティは実現するか?」を聴講しました。

両先生の対談のポイントを私なりに大筋で整理してみました。

・コンパクトシティの定義は不明瞭であいまい。都市によっても違う。
・コンパクトかどうかということよりも、住みやすいこと、都市としての魅力があることが大事。
・ある程度の適度な密度は必要。
・都市をたたむということはできない。豊かな低密度郊外地域をどうやって作り維持するかが課題。
・公共交通とは何か、多様な考え方があるが、小さな都市・地域でそれを維持するには住民の意識や普段からの付き合い(ソーシャルキャピタル)が重要。
・交通は住民のモビリティの権利を保証したうえで、環境と経済とのバランスを図っていくことが基本。
・都市マスタープランに市街地の空洞化の予測とそれに伴う交通計画、可変的プログラムを入れる必要がある。
・それぞれの都市にビジョンが必要で、制度はそれに合わせてうまく使っていけばよい。
・都市計画と交通、福祉、産業、環境、農村計画などの包括的検討が不可欠。

ということで、明確な結論は出ませんが、「コンパクトシティ」とは、そもそも実現目標となるものではない」といった感じでした。

話を伺ったうえでの、私の感想は以下の通りです。

・コンパクトシティ化は目的ではなく都市運営のひとつの方策。
・交通を維持できる経済があれば低密度郊外は残る。そのためには産業が必要だがIT社会では必ずしも従来型地場産業である必要はない。よい生活環境が重要。
・しかしそれができる地域はおそらく限られるので、あとは自然淘汰やむなしか?
・どこまでは公助しどこまで自助とするか、まちのビジョンと合わせて検討し示す(それがマスタープランか?)。選択は住民に。
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