SSブログ

Great Urban Places in Asia 144 - 結び 4 [アジアの都市探訪]

2.Sense of Placeの継承のために

 ここまで、アジア諸都市の優れたデザインとそこでの多様なアクティビティの観察をしてきた。それを踏まえ、これからの再開発や新規開発に際して大切な3つの観点について、sense of placeを継承するための方法について考えてみたい。

(1)小さなスケールによる段階的更新:ハノイ旧市街地
 ハノイの旧市街地には庶民生活の活力があふれている。小さなスケールが保たれ、小さなスケール毎に更新されている。路上には各種の露店が出、伝統的庶民的な装いの行商人が歩く。沿道の建物低層階はさまざまな店舗やレストラン、中層階は業務施設や住宅などに使われている。建物の中から街路までのスペースは連続的に使われている。そこには多くの人たちの目が注がれ、安心である。
ハノイの豊かな高密で多様なストリートライフを支え、センス・オブ・プレイスを生み出すためのデザインについて、3つの大切な状況がある。
 第一に、街路と建物にフレンドリーな関係が保たれている。セットバックはほとんどなく、小売店や飲食店が街路に開き、建物の間に隙間がなく連続して使われている。幹線系以外の街路は概ね幅員10m程度以下で、自動車やバイクの通行量は決して少なくないが、それらによって街が分断されることはなく、人とバイクは渾然一体として街路で共存している。
 第二に、旧市街地内においては新規の大規模開発はほとんどなく、建物、階や室単位での修繕やリノベーションが行われている。そのため住民や商業者が一度に街から追い出されることがなく、暮らしや商売が継続されている。
 第三に、フランス植民地時代からの歴史的建築物が多数残され使用されている。古びて補修が必要と見られるものも少なくないが、庶民の生活や商売の場として日常的に使われている。多くの場合、ひとつの建築はひとつの用途ではなく複数の店舗等によって利用され、街に様々な表情が現われる。長年のうちに地域の風土になじみ、濃黄色やパステルカラーに塗装された欧風建築が、気根を持つ濃緑の熱帯植物とあいまって並び立つ景観は、ハノイ独特のものである。
このような状況は、地域住民にとってはごく普通のことかもしれないが、地域の個性と活力を保つには必須であり、一度失われたら回復するのは困難である。
 ハノイのストリートライフには自動車交通、衛生、混雑、大気汚染、騒音などの問題が伴い、道路利用の制度や運用としてもあいまいさがあるだろうが、その管理され尽くされていないストリートライフが街に活力を与え魅力的にしている。交通以外の用途を単に排除してしまうことは、街路本来の目的である公益の増進、豊かなアクティビティづくりにそぐわない。それらの問題解決は大規模再開発や道路拡幅ではなく、場の個性を尊重した小規模で段階的な方策によるべきだ。

ハノイ図.jpg
ハノイ旧市街地の歴史的建築のファサード。よく使いこまれ、部分的にリノベーションがされている。
ベトナム風の装飾がなされているものもある。

 ハノイ旧市街地では、これからも多くの再開発が行われるだろう。場の個性と活力を保つには、今のファサードなど屋外空間形態を保つことが効果的である。ヨーロッパの多くの中心市街地では中世以来の街並みが残されているが、建築の形態や表情などの都市景観は公的なものとして保全され、インテリアや設備は時代の変化や個人の嗜好によって変えられる。再開発の場合、建物の間口は小さく保ちそれらが連続するように配置するとよい。大規模建築のファサードは分割し、軒の高さや開口部のプロポーションなどに一定の共通性を持たせながら、それぞれの節に異なる表現を取り入れる。地元の歴史的建築物から学んだ装飾や素材もよいだろう。それらがつくりだす外壁面の影は、街並みに豊かな時間の変化を映し出す。

nice!(0)  コメント(0) 

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

Great Urban Places i..Great Urban Places i.. ブログトップ

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。