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Great Urban Places in Asia 148 - 結び 8 [アジアの都市探訪]

(3)地域価値の保全と向上のための住民主体の活動:東京・神楽坂
 今日の課題:都市計画制度と経済状況
神楽坂は東京都心にありながら、江戸時代に端を発する商店街や路地界隈が残されている。それらは地域の貴重な資産であり景観的・文化的価値を持つ。そのことは行政のまちづくり計画にも記されているが、都市や建築に関する基本的な法制度はまちの価値を保全・継承することに寄与していない。また、神楽坂の街路、路地、建築は日常的に使われており、常に修繕や防災対策を必要とする。固定的な保存はできないし、それを目指すことが適切でもない。

 神楽坂は商店街のある神楽坂通り、伝統的路地界隈ともに、用途地域は自由度が高い商業地域、容積率は土地の高度利用が図られるべきとして500%が指定されている。(ただし容積率は道路幅員による制約が優先されるため、実際に500%を使える区域は限られる。)建築敷地の接道条件として前面道路幅員4m以上が求められるため、路地界隈では建て替えが困難か、建て替える場合には路地が拡がることになる。また防火地域に指定されているため、一般的な木造建築は許可されない。
 一方神楽坂は都心部であり近年は商業地、住宅地、伝統的な路地のあるまちとしての人気が上がるにつれ開発圧力が高まり、地価や家賃が上昇している。

 そのような法的、経済的状況の結果、主要道路に面した建物はほとんどが鉄筋コンクリート造の中高層建築に建て代わった。路地界隈でも再開発が進み、ヒューマンスケールで伝統的な質感を持つ路地界隈が残されているのはごく一部となった。まちの魅力が増して多くの人が集まるほど、地価や家賃が上昇し、それが負担できるチェーン店や事業所がまちを占めるようになり、多様な混在を維持することが難しくなっている。
 まちの価値を長期的な視点で保全しながら高めるため、地域主体の都市計画とマネジメントのしくみが必要である。伝統的な街並みを保ちながら、耐震、防火性能を高める方法には次のようなものがある。

・道路は拡げず、初期消火に効果的な給水栓と貯水槽もしくは水道からの配水管を設ける。神楽坂の路地は消防車が入れる幹線道路からは消防ホースが十分に届く範囲にあるので、初期消火対応に対応できるものであればよい。
・延焼の恐れがある部分を耐火仕様とし、その他の部分については防火上の措置を講じたうえで木造建築も可能とする。また、火災検知や消火に関する設備の設置、避難・消火訓練などの地域防災活動も合わせて実施する。
・耐震方策としては、大地震によって少なくとも一瞬で倒壊しないよう、既存建物の補強を早期に実施する。それにより、逃げる時間ができ、人命が失われる危険は大きく減少する。ストーブやコンロなどは地震の際には瞬時に停止する機能を持ったものに限定し、旧式のものは使用禁止とする。それにより発火源となる危険が減少する。
・コミュニティの維持には防災は無論大切だが、日常生活や商売の場として使い続けることはより基本的なことである。防災を名目にコミュニティを破壊してはならない。


(続く)
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