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坂和弁護士「都市計画制度の疲労と今後の展望」講演概要 [都市計画]

「まちづくりの法律がわかる本」を著された、坂和章平弁護士の講演を中心とした、比較住宅都市研究会に参加した。以下は講演の超概要。
(以下の文章は筆者が聞き取ったものをまとめたものであり、坂和弁護士の確認は取っていません。筆者の誤認である可能性があることに留意して下さい)

【50年を単位とした概観】
 今年は明治150年になるが、だいたい50年ずつ区切ると、社会の変化と都市計画の流れが見えてくる。
1868- 明治維新、近代国家形成の創始期。
1919- 旧都市計画法、大正デモクラシーから戦争、そして戦後復興へ。
1968- 新都市計画法、人口激増、高度経済成長、都市化と郊外スプロールへの対策。
 成長が当然の、ある意味幸せな時代。
2018- 人口減少、コンパクトシティへ。都市計画の制度疲労が生じている。
市街化区域の削減、空き地や空き家の増加。

【都市計画の制度疲労と対策】
 これから「母なる法」の都市計画法は、その枠組みは残るが実質消えていくのではないか。都市再生特別措置法や国土強靭化関連法などが取って代わる方向に。都市再生緊急整備地域に指定されれば、 なんでもありという状況になっている。今までは住民合意といっていたが、都心部には住民はなく企業のみ。どんどん拡大して特別措置法のオンパレードになっている。
 特措法の積極面として、国際競争のなかで、東京を国際金融都市とするため、国としても資金投下を集中していくというものがある。大阪では民間投資中心になっている。
 これからは特措法と国土強靭化関係法の影響が大きくなる。
 都市計画関係法制度の基本的な枠組みを大きく変える必要はない。
 日本では政権が変わらないので官僚も変わらない。そのため政策に継続性があるが、変わるのとどっちがよいのか。経済問題と都市計画をセットで考えている。
 今後は、都市計画契約的なものがでてくるのではないか。
 開発利益をどう捉えるか。固定資産税があがることではなく生産緑地が増えることが開発利益ともいえるか。
 同じ制度でも立場や見方によって評価は異なる。

【コンパクトシティ】
 これからは全国でコンパクトシティ、スポンジ化対策が進められている。線引き制度はあってもよいが、市街化区域の縮小が必要。
 立地適正化計画は100くらいの自治体が作った。コンパクトシティ一色で、中心部に都市機能を集約し、それに対して国が補助金出すというしくみ。その裏返しとして居住抑制地域を指定する。線引き、調整区域は守るはずが、なし崩しになっている。強制移住はできないし、誘導もお金かかるので、「なるべく移りましょうね」となっている。
 コンパクトシティに反対の人はいない。しかし居住抑制区域に住んでいる人に野垂れ死にOKとはいえないので、やや中途半端な状態。
 両親亡くなった後の郊外の実家をどうするか。原則として市街地を集約すべきだが、これまではそこに国は介入しなかった。空き地を放置しておく自由を認めないことは基本はよいことだが、行政の介入はどこまでか。現在、空き地、所有者不明土地は九州くらいの面積がある。相続のとき登記しないで放置されているものも多く、相続登記を義務付けるか。
 生産緑地法の改正、2022問題については、かつては農地を守るための生産緑地であり免税措置を講じた。30年経て、農地で残そうという方向になっている。今は市街地拡大の必要なし。 

【住民参加型都市計画・まちづくり・合意形成】
 住民参加型の都市計画は、その地域の住民に相当の知識や経験の蓄積がないと難しい。
 日本では公共の概念が低いことは課題。その裏腹として個人の権利主張が強い。土地取引で儲かるのがわかっているならみんなそうする。それが公共の福祉に資するかは誰もかまわない。
 東日本大震災のような広い面積の復興を短期間でどうするか?津波対策として高台移転はあるが、万里長城のような防潮堤は意味がない。逃げる体制をどうするかが根本。復興試案では大規模な高台移転はナンセンスと思う。しかし官僚機構とすれば復興庁などをつくり対策をやっておけば、国民からの批判は少ないという意識がある。復興需要が問題にもなり、土建国家的体質は残っている。過疎化が進んでいた津波被災地で区画整理やっても意味がない。
 阪神大震災では被災地が都市部で、復興の基礎となる知的レベルがあり、具体の地元提案や修正案があったところがうまく行った。法定再開発、区画整理の規模は比較的小さかった。
 東北では、経験の無い住民にはいきなりまちづくりできない。月に1回くらい東京から専門家が来る程度ではダメ。住民参加の実態分析が必要。住民参加はマジックワードだが、その中味や住民の能力はどうか?
 大阪都構想では住民投票が行われたが、実際その意味が分かる住民レベルか、判断力があるか?直接民主主義はどこまで機能するか。地区計画の提案制度も、提案できる住民能力があるか?阪神淡路震災復興ではまちづくり協議会に能力があった(ところがうまくいった)。

【景観法関係】
 景観法は、美しい日本をつくろうという声のもと安部政権1期目のときにできた。そのときは外国人観光客を1000万人以上呼ぶというのは実現できないのではと思われたが、中国の経済発展のおかげで達成できた。
 景観法で景観地区の指定は、制限が強いので誰もやらないだろうと思っていたが、芦屋が全市を指定した。他にはない。景観形成地区はどこでもやる。日本では、景観法、景観地区は使いこなせない。  芦屋はリスクを犯してやった。京都の景観条例もすごい。行政が本気になればできる。マンション業者もそれに合わせたほうが得という感覚でつきあっている。

坂和弁護士は率直大胆な語り口で、わかりやすく大変おもしろかった。また都市問題に取り組むに際して弁護士と都市プランナーの基本スタンスの違いのようなものが感じられ、興味深かった。

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