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Great Urban Places in Asia 149 - 結び 9 【最終回】 [アジアの都市探訪]

地域の個性を維持し高めるための市民活動
 神楽坂では住民や商店会、NPO関係者などの長年の努力により、まちづくり活動が活性化し、多くの成果を挙げてきた。年間を通し伝統的なもの、モダンなもの、若者向け、高齢者向け、そして男女問わず楽しめる多様な文化・エンターテインメント活動が展開されている。それらは神楽坂の文化的資産を活かしたものであり、ほとんどは地元組織によって運営され、多くのボランティアによって支えられている。大手代理店やディベロッパー主導ではない。それらの活動の多くは15年以上前、神楽坂が落ち込んでいた時代に人々をまちに導き、神楽坂を楽しんでもらうことを目的とした。

 神楽坂のイベントの代表例である神楽坂祭りは1972年に始まった。毎年7月下旬の水~土曜日4連夜に開催される。伝統的な形態の露店が神楽坂通りに連なり、阿波踊りには芸者衆や地域のこどもたちも含めて3,000人以上の踊り手やお囃子が参加し、まちを練り歩く。この祭りは、商店会がまちづくりをする必要があるとの信念のもと神楽坂の商店会が主催しており、傑出した商店会活動として、2015年に東京都の商店会活動グランプリを受賞した。秋には、まちの文化祭「まち飛びフェスタ」がある。毎年約2週間にわたり神楽坂を舞台として80ほどのイベントが行われる。そのフィナーレは11月3日の「坂にお絵かき」で、延長約700メートルのロール紙を神楽坂通りの中央に敷き、住民、観光客、大人、子どもの誰もが自由にお絵かきを楽しむことができる。その同じ場で大小様々なパフォーマンスが行われ、人々は、神楽坂のみち空間は自分たちが楽しめる場であることを実感する。そのほかにも様々な目的のまち歩きツアーやイベントが年間通して行われている。
 大資本に依存しない住民やボランティアの長年の活動によって、多様性が保たれ、地域のブランド力やファンが増え、神楽坂らしさの認知や愛着が広がっている。神楽坂のまちづくり関係者の間では、「まちを大きく変えてしまうのではなく、まちの価値を保ち、少し良くして次世代につなげる」という意識が共有されている。このような住民主体の活動と組織は、法規制と経済圧力の前には力不足で多くの困難と挫折はあるものの、まちの個性を保全、継承し、健全に保つための鍵である。

神楽坂路地.jpg
歴史的風情が残されている神楽坂の路地界隈。伝統的な形態と雰囲気が保たれている。
このような路地は全て私有であり、この環境を維持するために努力がなされている。

◆イコモス委員の視点
 私は神楽坂に都市計画・デザイン事務所を持ち、またNPO粋なまちづくり倶楽部の理事として2003年から神楽坂のまちづくりに関わっている。数年前、ユネスコ世界遺産の登録について審査する機関であるイコモス(ICOMOS: International Council on Monuments and Sites)委員数名に神楽坂をご案内する機会があった。イコモス委員長は神楽坂の文化的価値を賞賛されるとともに、その保全と継承について法律的な保護がなく、住民や商業者の自主的活動に依っていることに大変驚いていた。

Great Urban Places in Asia は今回を持って完結します。
ここまでお読みいただき、ありがとうございました。

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