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Great Urban Places in Asia 3 - イスタンブール Istanbul 2 [アジアの都市探訪]

 アヤソフィア~スルタンアフメット・ジャーミー周辺  Ayasofia and Sultanahmet Çami Area

 イスタンブール旧市街の中心部であり、世界中から観光客が集まる。アヤソフィアAyasofiaや、イスラム寺院スルタンアフメット・ジャーミーSultanahmet Çamiがあり、その間には広場、周囲にはレストランやホテルが立ち並ぶ。観光客、商売人や地元の住民たちが集い、くつろぎ、大いににぎわっている。

アヤソフィアは4世紀にキリスト教会として建設され、その後数度の火災を経て6世紀にビザンツ様式の大聖堂が建設された。それ以後はギリシア正教の総本山となったが、15世紀にはオスマン帝国がコンスタンチノープル、今のイスタンブールを征服するとイスラム教の寺院とされた。その後20世紀にトルコが共和国となった以降は、博物館として公開されている。トルコの歴史と文化を体験し表現する壮大な建築である。

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荘厳なアヤソフィアを背景に、モダンなトラムが街を走り抜ける

 トラムは市内で4線運行されており、そのうちT4線は旧・新両市街地の中心部を結ぶ。道路が狭く歩道すれすれを走り、歩行者に触れそうなところもある。全て低床式の新型車両、4両編成で頻繁に通行され、住民や観光客に大いに利用されている。

(続く)
本書はamazon.co,jp 及び アメリカ、英国、カナダ、フランス、ドイツ、インドのアマゾンサイトで購入いただけます。(印刷版は日本のみ、kindle版は全ての国で可能)
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Great Urban Places in Asia 2 - イスタンブール Istanbul 1 [アジアの都市探訪]

 イスタンブールはボスポラス海峡を挟んで東のアジアと西のヨーロッパの接点にあり、豊かな歴史・文化を持った都市である。紀元前660年ごろにビザンチオン(Byzantion)という名で創建され、紀元前330年にコンスタンチノープル(Constantinople)とされて以来、この都市は東ローマ帝国、ラテン帝国、ビザンチン帝国、オスマン帝国と16世紀以上にわたり首都であった。

 イスタンブールは古代シルクロードの時代から、ヨーロッパと中東を結ぶ陸路の要所であり、黒海と地中海を結ぶ唯一の海路にも接していた。そのことはイスタンブールの発展に大いに寄与した。世界的な宗教の拠点としても重要な都市であり、ローマ及びビザンチン時代はキリスト教の拠点であり、オスマン帝国時代はイスラム教の拠点であった。

 今日のイスタンブールは、イスラム文化を基調としたなかに、ヨーロッパの伝統や優美さ、アジア的な混沌や活力、賑わいが混在している。水の都、東西の融合・接点、歴史の都、バザールのある商都などさまざまな呼び方が、どれも良く似合う。その地理的位置により昔から交通の要所であり、さまざまな交易交流がなされてきたことが、今日のイスタンブールを見て読み取れる。波止場のあるエミノニュ、ユスキュダルなどの街には歴史的様式による構造物や建築が多く、波止場を拠点として市街地開発が進んだことがわかる。
 
 イスタンブール中心部のヨーロッパ側は、金角湾 (Halic) を挟んで南側の旧市街 (Old City)、北側の新市街(New City) に分かれる。それらはさらに多くの地区に分かれ、地区によって成立した時代が異なるため、街や建築の造りが異なり個性的である。旧市街の中心部はヨーロッパもしくはトルコ様式の建築が多い。建築は壁面を連ね、街区を単位とした都市構造となっている。旧市街の歴史地区の一部は、ユネスコの世界遺産に登録されている。旧市街でもその中心部から離れるにつれ、現代建築が多くなる。
新市街では、金角湾を挟んで旧市街と対面するカラキョイ地区からタクシム広場に至る区域が中心部である。そのメインストリートであるイスティクラール通り沿道には、ヨーロッパ様式の重厚な街並みが連なる。広場は市内の随所にあるが、緑は少なく日陰が少ない。

 ボスポラス海峡を挟んだアジア側にもカドキョイ、ユスキュダルなど古くからの港町がある。それらは旧市街の中心部と同様な都市構造を持ち、歴史的建造物が多い。そこから郊外に行くと、現代的な都市が拡がる。
 
 イスタンブールの中心市街地はどこも歩行者が多く、路上のアクティビティが活発で、大変にぎわっていた。それらの街には、スーパーブロック型の大型開発や超高層ビルは見られなかった。

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(続く)
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アジアの都市探訪 Great Urban Places in Asia 1 [アジアの都市探訪]

 2018年12月に、Great Urban Places in Asia を出版しました。その本は英語版で、何人かの方から、日本語版はないのか?との問い合わせをいただきました。今のところ日本語版の出版予定はありませんが、このブログにて、これから順次、節ごとに、日本語訳を公開していきます。

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序章 Introduction
◆都市らしさ -Sense of Place-
 本書は、アジアの魅惑的な都市の「都市らしさ」、センス・オブ・プレイスについて描いたものである。

 今日アジアの都市の多くで、その都市らしさが失われつつある。混沌とした活力にあふれた活動は、公共空間から排除されつつある。歴史・文化的価値を持つ建築や、庶民の生活を育んできた住環境が、現代的で世界共通仕様のものに変わりつつある。人が歩く街から車が走る都市に変わりつつある。政府や事業者そして多くの住民も、それが最大の経済的利益と便利さを生むものと考えた。今日、発展途上にある多くのアジアの都市では、開発圧力がとても大きい。

 過去およそ200年間、多くのアジア諸国において、程度や時期の差はあるものの「近代化」とは「西洋化」に近い意味を有した。産業革命が先行した欧米に比べてアジアは近代化が遅れたとされ、各地の風土や文化に応じて発展してきた都市や建築は、近現代的すなわち西洋的なものに急速に置き換えられていった。多くの人たちはそれを正しいと思い、また現実的に他の選択肢は限られていた。その背景として土木・建築技術、資本主義経済、流通機構の発展と世界的な普及がある。

 近現代化によって人々が得ているものは大きく、今日の都市社会はそれなしでは考えられない。それによって新しい魅力的な都市空間も生み出されている。
 しかし、現代的な開発によって都市のすべてを覆いつくしてしまったら、何が残るのだろうか。混沌雑然としているがヒューマンスケールで人々の生活や商売、活力があふれ出しているみち、防災面の問題があるかもしれないがしっとりとした落ち着きのある伝統的路地界隈などは、一度失われて大型ビルやショッピングセンターになってしまったら、二度と取り戻すことはできない。そこで長年生活していた人たちや商売を営んでいた人たちは、まちを離れてしまう。
 既に失われたもの、そして失われつつあるものの価値に気づき、それを持つ街を活用しながら保全して、次世代に継承していくべき時代になっている。

◆魅惑都市とは何か What is a Great Urban Place?
 アジアの「魅惑の街 Great Urban Place」には、次のいずれかのような状況がみられる。これらには古いものも新しいものもある。

 公共空間(Public Space)*に多様なアクティビティがある。
注*)本書では、「公共空間」とは行政機関が管理する空間ではなく、一定のルールやマナーのもと、一般市民(public)が自由に利用できる空間という意味で用いる。
 ヒューマンスケールで伝統的な都市形態が保たれており、まちに高密なにぎわいがある。道や空間が狭いところに人が多く、活力や興奮が充満している。
 公共空間が人々の生き生きとした生活や商売の場として使われている。すなわち住民、商業者、来訪者が自分たちの領域として、主体的に、一定のルールやマナーのもと、公共空間を使いこなしている。それによって場に一定の秩序が保たれている。特に、日常的な生活感や人間臭さにあふれている小規模の公共空間は、先進諸国に多く見られるハイセンスでエンターテインメント系の公共空間利用とは異なる状況であり、アジアらしい魅力がある。
 自国の気候風土や文化を基盤としながら、西洋文化、新しい技術や設計手法との混合により、ユニークな都市・建築空間が生み出されている。
 街路、建築、屋外看板、設備などが古くてもよく使いこまれ、地域性と経年変化による味わいを持っている。
 温暖な気候の地域では、早朝から夜遅くまで路上の市場や屋台に多くの人が出て、路上が庶民の日常的な食事や交流の場となっている。
 一部の都市には、車が入り込まない歴史的伝統的な路地界隈がある。そのなかには現代的な要素を取り込んだ保全型のリノベーションにより、小規模な更新が進められ、社会状況の変化に対応した新しい位置づけを得ているものがある。

 旧来からのアジアらしい街は、ともすれば「遅れている」、「貧しい」、「汚い」などと評されるが、市民や観光客に大いに支持され、活用されている。各地の歴史、気候風土に基づいた誇るべきものであり、都市の個性的魅力としてアピールし、発展的に継承されるべきものだ。特に各地の路地界隈はそのような魅力、特質を備えた、重要な都市空間であり、歴史的・文化的価値が高いものが多い。
本書の各章では、以上のような魅力を持つアジア各地の都市空間でどのようなアクティビティがあり、それを支えている都市や建築などのデザインはどのようになっているのか描写した。

◆調査と記述の方法
 アジアは広い。ヨーロッパに隣接した西アジアから極東まで数多くの都市があるなかで、経済や文化の中心都市などから20地区について記述した。筆者は極東の日本在住であり、地域的な偏りがある。これらの地区は魅力あるアジアの都市のごく一部である。
 2011年から2015年にかけてこれらの都市を訪問し、昼夜まちを歩き観察し、写真撮影やスケッチをした。各都市の滞在日数は3~4日程度であり、表面の一部を見ているに過ぎないだろうが、それでもある程度のsense of placeは感じ取れたと考えている。現地調査の後、上記のような特徴を備えた魅惑的な地区について、そのsense of placeを伝えるためスケッチと五感で感じたことを中心に記述した。訪問していない場所についての記述はない。
 各地の気候風土、歴史、文化、産業に根ざし、その地域の人々によく使われている公共空間を中心に描いたため、近年出現しはじめた、現代的な技術と地域性を意欲的に融和させたデザインの都市・建築空間は取り上げた例が少ない。
 それぞれの都市で、最も魅力・にぎわいがあるとみられた地区については街路・街区図を、さらにその中心部については建築平面投影図を作成し、公共空間の活動とその基盤である空間構成との関係性を読み解くことを試みた。それらの図面は先行の調査研究著作*1と同様の表現、スケールとし、その対象とされている都市との比較が可能なようにした。
 結章では、各地区の調査を踏まえて、魅惑の街が備えている条件や今後の都心部再開発の方向性についてまとめた。また、各地区の街路や交差点密度について得られたデータと都市の特徴との関係について考察した。

 読者の皆さんにはまず、アジア各都市の様々なsense of placeに出会い楽しんでいただきたい。そして、近代化、グローバル経済化のなかで失われてしまったものや失われつつあるものの貴重さを認識し、次世代に向けて私たちはどのような都市空間を残し、継承し、再生していけばいいのか、いっしょに考えていただければありがたい。
 これからも各都市で様々な開発や更新が行われていくだろう。その際にこの本が、地域の風土や文化に根差し、地元住民や商業者、来訪者が想う「都市らしさ」が丁寧に活かされ少しずつ更新されていく一端になるなら、まことにうれしいことである。

*1)
Allan Jacobs, “Great Streets”, MIT Press, 1993
Peter Bosselmann, “Representation of Places”, University of California Press, 1997

(続く)

本書はamazon.co,jp 及び アメリカ、英国、カナダ、フランス、ドイツ、インドのアマゾンサイトで購入いただけます。(印刷版は日本のみ、kindle版は全ての国で可能)

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さくら

 今年は開花以降寒い日が多かったため、さくらが長く咲いています。コロナ問題で花見宴会などがなく、しみじみと眺めるせいか、今年は特に綺麗に感じます。来年もまた咲きますね。

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埼玉県戸田市、荒川のスーパー堤防のすぐ外側のさくら並木。このすぐ近くには、プロ野球ヤクルトスワローズの合宿所があります。

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彩湖(人口湖、貯水池、調節池)とさきたま大橋。このあたりは昨年10月の台風19号で完全に水没しましたが、先月に復旧されました。

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和光樹林公園。ちょっとわかりにくいですが、隣り合っている2本のさくら、1本は既に散って葉が出ているがもう1本は満開。さくらにも個性があるのですね。

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樹林公園の脇道、さくらのトンネル。
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