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Great Urban Places in Asia 141 - 結び 1 [アジアの都市探訪]

結章 都市を魅惑的にするもの What makes it a Great Urban Place

 20ほどのアジアの都市を歩き観察した結果から、人々を魅惑し、活力がある都市が持つ共通で普遍的な条件とは何か、導けるのではないだろうか。それらは他都市での再開発や新規開発に際しても有効なものとなろう。ここでは改めてアジアの多くの魅惑的な都市に共通してみられる条件、課題とその対応のための方策について考えてみたい。

基礎的な条件
 都市が魅惑的であるためには、まず、いくつかのごく基礎的な条件がある。最も重要なことは、生存と生活に必要な安全環境が確保されていることである。大気汚染、騒音、悪臭などがひどければそこを歩いたり滞在したいと思わない。自動車通行量が多く歩くのが危険な状況、災害や犯罪の危険な気配なども、街から人を遠ざける。

 次に、みち空間や広場などパブリックスペースにおいて多様な滞在型アクティビティを行える環境があり、それらが行われていることである。そのための基礎的な条件として以下がある。
気候 屋外活動は気候に大きく影響される。その許容範囲は個人の感度や諸々の状況により異なる。東南アジアでは暑い気候であっても屋外マーケットは日常的に行われている。寒冷期が長い北欧ではかつてはオープンカフェは非現実的とされていたが、今では各地で行われている。

密度 
 一定以上の活動密度があることが望ましいが、限度を超えると心理的圧迫感、事故の危険性、災害時避難の困難などが高まる。活動密度が低すぎると退屈、さびしさ、空虚さを感じる。アラン・ジェイコブスは欧米の12都市における街路20箇所で歩行者通行量調査を行い、歩行者密度が7-9人/(歩道幅員メートル・分)であれば、どのようなペースでも歩くことができるとした*1。アジアの活力ある都心部では歩行者密度はその範囲内の上位以上であり、その密度は日常的なものと受け取られている。
*1) Great Streets, pp273

衛生 
 ある程度よい衛生状態が保たれていることは必要だが、その期待レベルは場所や状況によって異なる。高級なオープンレストランではごみひとつ落ちていない状況が必要だが、庶民生活を支えるローカルマーケットなどではある程度は許容範囲となる。
災害に対する備え 地震や火災、風水害に対する耐性や防災、避難対策があること。これは来訪者にはわかりにくいが、住民や商業者には浸透し、初期消火や避難誘導等がなされることが必要も忘れがちになるが、災害時でも命は助かるという安心感や備えがあることが大切である。

経済活動 
 パブリックスペースにアクティビティを起こすためには、一定以上の経済活動がその都市で行われていることが不可欠である。
 主な滞在型アクティビティには買い物、飲食、交流・会話、休息、商売、イベント・祭事などがある。複数の滞在型アクティビティがアイレベルで行われていると、まちのにぎわいや景観が豊かになる。魅惑的な都市空間では、人々は主体的、意欲的に楽しみながら時間を過ごしている。庶民の日常的な生活や商売がみちや広場に高密度にあふれている状況は、アジアの都市の大きな魅力である。

(コラム 歩行者通行量と密度 計測例)
 東京・神楽坂通りの平日、昼と夜の歩行者通行量は7~24人/(歩道幅員メートル・分)であった。その密度は概ね快適であり人々はまちのそぞろ歩きを楽しむことができる。ただし、夕方から夜にかけて地下鉄駅入口付近では通行量が非常に多く、多くの歩行者が車道に溢れ出る。また、神楽坂通りの歩道幅員は2.0~2.5m程度のため、歩行者がグループになって横に広がりゆっくり歩いているとすぐに詰まり感が出る。このように歩行者が多い個所では、歩道上の変圧器、駐輪、置き看板は歩道の有効幅員を減らし、歩行の障害になる。

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