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Great Urban Places in Asia 142 - 結び 2 [アジアの都市探訪]

豊かなパブリックライフを支える物的条件
 街路は最も重要な公共空間であり、その基本的な機能は目的地まで安全なアクセスを確保することである。滞在型アクティビティがあればそこにパブリックライフが生まれる。そのアクティビティは全て歩道上である必要はなく、隣接したセットバックスペースにあってもよい。最も必要とされる環境や設備としてはひとりであるいはグループで快適に座れることであり、ベンチ、椅子、植栽スペースの縁などがあり、都市によっては路面に座ることも普通にある。樹木や庇、パラソルなどによる日陰があれば、より多くのアクティビティが快適になる。

 豊かなパブリックライフは物的環境のみによって生まれるものではない。街路と建物の間にフレンドリーな関係があることが必要だ。フレンドリーな関係が保たれているとき、建物間口は狭く、官民境界に沿って隙間なく並ぶ。1階は街路に向かって大きく開き、街路から奥まで見え、多くは小売店やサービス店、飲食店とされている。店先は歩行者を歓迎するように設えられ、ほどよくデザインされた案内サインによって店のサービスレベルや価格を伝える。それらによって、人々は道を歩きながら路面店の様子を知ることができる。全ての店が開放的な設えに適しているわけではないが、開口が小さな店が並ぶと街路とのフレンドリーな関係が損なわれ、道の際の部分でのアクティビティが減少する。
 豊かなパブリックライフがあるところには、スタイル、用途、年代が異なる建築が混在している。建築の形態や表現、高さ、間口、軒高、開口部のプロポーションがある程度揃っていると、街並みが整ってくる。アジアの多くの都心部には、場の特性を保つのに寄与する古い建築がある。

【街路のスケールとネットワーク】
 多くの場合、いきいきした街路の幅員は10~12m、またはそれ以下である。そのスケールでは、歩道と店先空間は一体的な空間として認識される。街路全体(中景)と目の前のディテール(近景)の両方において人の行動、建物や空間の構成、看板や装飾物及び路面の状態などを瞬時に把握でき、場の特性を認識しやすい。幅員がそれ以上になると、一体的な空間として認識される範囲は片側の歩道と店先空間となり、街路全体ではない。
 できれば歩道、場合によってはセットバックを加えた空間は、移動と滞留というふたつの基本的アクティビティを受け入れるのに十分な広さがあるとよい。街路樹や植栽、照明灯、ストリートファニチャー、異なる路面仕上げなどによってそれぞれの領域が柔らかく分けられているとさらによい。
 多くの都市には高密度でありかつ親密な街路網がある。多くの小さな街区と交差点がある。それにより、歩くルートに多様な選択肢が生まれ、地元ビジネスは多様な顧客を得るチャンスが増す。いくつかの都市には車が入り込まない、幅員3m程度以下の路地がある。それはコミュニティの毛細血管のように、人々や活動をまちの隅々にまで行き渡らせ、生気を与える。人々は車に煩わさせることなく、路地を生活や商売の場とする。
 各章で図面化した中心市街地の街路と交差点密度を比較してみると、街路密度は約12~30km/km2、交差点密度は100~1,000か所/km2であった。歩きやすい都市ほどそれらの密度が高い傾向にある。

【広場・公園】
 広場や公園は高密度に都市化された市街地において大切なオープンスペースである。快適で機能的な公園には広すぎず狭すぎない適度な空間があり、多様な滞在型のアクティビティが、様々な人々により、様々な目的により、様々な時間になされる。歩行や移動のための空間と滞留のための空間が緩やかに分かれており、相互の干渉はそれぞれにおける活動を阻害しない程度にとどまる。
広場や公園では、目の前で起こっていること(近景)が見えるだけではなく、全体を見通せるビスタライン、視点場があることが大切だ。それによって自分の位置がわかり、防災や防犯に関しての安心感が増す。


(続く)
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