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Great Urban Places in Asia 140 - 神楽坂 6 [アジアの都市探訪]

神楽坂のまちづくり活動
 神楽坂では1990年代初頭から地元住民、商業者、NPO、建築や都市計画、法律の専門家などにより、地域の価値の共有とその保全・継承を目指すまちづくり活動が続けられている。今日までそのベースとなっているのが1994年のまちづくり憲章であり、まちづくりの方針として以下を宣言した。
(1) 坂と石畳のみちを中心に、歩く人にやさしいまちをつくります。
(2) 神楽坂の歴史や伝統を背景に、文化のかおり高いまちをつくります。
(3) 安心して買い物ができる、うるおいのある商店街のまちをつくります。
(4) 住むひとが暮らしやすい、やわらかなまちをつくります。
(5) まちづくり協定を定め、未来の神楽坂をつくります。

 それを受け、1997年には地元の協定委員会と自治体(東京都新宿区)の間で「神楽坂通り沿道1~5丁目地区まちづくり協定」が締結された。主な項目は次のとおりである。
(1) 街並みの連続性をつくる―壁面線をそろえる
(2) 親しみやすい街並みをつくる―高さ(形態)をおさえる
(3) ゆとりと粋な工夫のための空間―店先空間(敷地)を整備する
(4) 粋な工夫をする―意匠等の工夫に努める
 この協定はまちづくり憲章の理念に基づいて形態誘導に踏み込んでいるが、文言は柔らかく、各地権者、店舗の自主性を尊重している。法的拘束力を持たないが、新宿区とも連携し、建築主と地元との協議のよりどころとして実質的な効果をあげている。協定運営は実質的には神楽坂通り商店会事務局が担い、NPO法人粋なまちづくり倶楽部など地域の建築や法律の専門家がサポートしている。その後、地区内に大規模マンションが建設されたことが契機となり、建築物の最高高さ制限や用途規制を盛り込んだ地区計画が策定された。
 2010年にはNPO粋なまちづくり倶楽部と住民が中心となり、ワークショップや公開シンポジウムを開いて検討した「粋なまちなみ規範」が提案された。内容は以下のとおりで、神楽坂らしい粋なまちの保全と継承を目指している。

神楽坂 粋なまちなみ七規範 (神楽坂通り沿道1~5丁目地区)
1.まちのヒューマンスケールを保つ 
2.みちと建物の親密な関係を保つ  
3.建物の高さを抑え、そろえる  
4.1階の用途は神楽坂通りにふさわしく  
5.低層階のファサードは素材感を活かし、周辺との連続性を
6.出入口は美しく、ゆとりを持って
7.サイン、看板、照明は歩行者が快適に、楽しめるように

路地界隈 粋なまちなみ七規範
1.みちをひろげない、みちをなくさない
2.神楽坂らしい路地界隈のスケール感を守る
3.路地のまちなみの連続性を保つ
4.路面の仕上げは自然石で
5.外装や外構は素材感を十分に活かし、周囲と調和したものに
6.サイン、看板、照明は路地空間になじむものに
7.路地を使う作法を守り継承する

 神楽坂ではこれまで区画整理事業や大規模な面的開発が行われてこなかった。地形が複雑で高低差があり、かつ土地の権利が細分化されており、大規模開発には多くの手間がかかり、技術的、経済的な課題があったためである。その結果、土地の大規模集約が起こらず、比較的小規模な建物の個別の建て替えによってまちが更新されてきた。そのため街路と路地のネットワーク及び伝統的な地割はほぼ保全されており、また、まちづくり協定や粋なまちなみ規範は概ね守られている。
 一方、神楽坂通りの建築ファサードデザインについては、今日、依るべき規範がなく通りの景観は整っているとは言えない面がある。
 神楽坂通りにふさわしいまちなみ景観づくりは、継続的な課題となっている。

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