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神楽坂の路地界隈の変化- 景観の動態的保全

20170330 NPO法人粋なまちづくり倶楽部 174回まちづくり住まいづくり塾 
今あらためて!神楽坂まちづくりシリーズ第3回

「神楽坂の路地界隈における建物更新の動向と特徴-景観の動態的保全と継承に着目して-」
明治大学大学院建築学専攻 熊谷友花さんの修士論文の発表と意見交換

【論文発表】
◆この10年、路地界隈の主な変化
・ 対象地区(神楽坂1-5丁目の神楽坂通り沿道と伝統的路地界隈)における2006-16年の建物更新は計97回であり、うち新築が27件、改修が70件と改修(ほとんどが建築確認不要の小規模改修)が多い。更新は地区内で偏り無くおこっており年代的にも毎年ほぼ同様のペース。
・ 建物間口は3間以下が約30%で、神楽坂通りに面する建物の間口は路地のそれよりも狭い。
・対象地区の道路の80.3%は幅員4m未満。幅員1.8m未満の路地は10年間で25%から16.7%に減少。一方、幅員が4m以上に広がったところはほとんどない。
・ 1階の用途は飲食店が47%であり、10年間で8ポイント増加。
・ 改修事例では「神楽坂らしい」として、事業者自ら黒塀や格子などのデザインを採用している例が多い。また、従来からの吹き付けタイル仕上げなどの利用が多い。
・ 近年の特徴として、大きな開口部を持つものが増加。
・ 新築では高さを抑えて地下を利用するものが出てきている。

◆課題
 新築、改修事例ではそれぞれ神楽坂らしさを表現したファサードが多いが、現行法制度は動態的保全と相反することも多い。地域独自のルール、たとえばセットバックの制限、建築高さについての道路斜線制限の緩和(路地界隈~路地に寄り付いて建てる)などの制度化が求められる。

◆意見交換
・ 神楽坂では「開いている」建築と「閉じている」建築が隣り合って共存しているところがおもしろいのでは。全部開いたら神楽坂ではなくなる。「開いている」と入りやすいが、「閉じている」店は「大人」度がたかい。
・ 神楽坂で、大規模な土地の集約が起こらず、まんべんなく更新が起こっていることは、健全な更新がされていると見てよい。
・ 大きな開口部を持つ店舗・飲食店は近年神楽坂に限らず増加している。
・ 段階的に道路を広げようという2項道路の主旨は、近年の神楽坂ではほとんど実現されていない。制度的な無理が露呈している。3項道路指定がされることは前進だが、それで課題がすべて解決されるわけではない。
・ 高さ制限など地区計画は一定の効果を挙げているようだ。神楽坂のまちづくりルールは、完璧とはいえないが、これまで取り組んできたことの成果が挙がっていると評価する。
・ ファサードの改修が多いが、構造(耐震など)の改善は部分的であり、本質的な問題の先送りでは。あと10年もしたら構造が持たなくなるものが出てくるだろう。新築ではなく改修で建築の強度を上げることは可能だが、建築基準法によらない(抵触しない)大規模改修の方策を検討する必要がある。木造であれば部分的な交換などで対処しやすいが、重量鉄骨やRCでは難しい。
・ やはり地元、住民が積極的にまちづくりに関わることが基本的に大事。
・ 陸前高田では、震災後住民は高台に移転したのに、低地をかさ上げした区画整理地区の大半は住居系の用途指定がされ、商工業系の用途が制限された。さらに準防火地区に指定したため、地元産の木材を使うことも制約される。行政の施策とまちづくりの方向がばらばらである。長い歴史を持ちそれを大切にしようというまちづくり活動がうらやましい。
・ 屋外広告物、看板については、神楽坂通りでは大きく派手なものもあるが、路地界隈では少ない。人の視線の高さ、歩く早さなどが違う。
・ 神楽小路の奥に建設中のゲームセンターは、路地の景観に全く合わないものであり、そのようなものを予防するためにもデザインガイドラインなどを公開することが必要だ。
・ 路地の景観を守ることは権利の制限になる部分もあるが、一方それによって資産価値や商業的な魅力を長期にわたって保全することにもなり、権利者にとっても利益になる。そのことをうまく説明したい。和可菜が休館しているが、神楽坂のあの場所あの雰囲気でしか出来ないビジネスがあり、あの状態で日本料理店や宿泊施設などをやろうという事業者はいるはず。権利者と事業者をうまく結びつけるしくみがあるとよい。
・ 3項道路や街並み形成型地区計画の実現に向けて、3/21に興隆会を開催したところ反対意見が出ず、区もその方向で動き出している。

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