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ほっとするまち・帰りたいまち(震災復興プロセスの提案)

震災復興手法として様々なものが考えられますが、
・被災者(住民、企業)の視点に立つこと
・被災者が復興に希望を持てること
が大切と考えます。
 日々の糧である水、食料そして住居の確保はもちろん必須ですが、それだけではなく被災者が復興に向かい努力することに希望があり、そのプロセスに参加し、そこで収入が得られることが大切です。それにより復興が上からのものではなく、また被災者に「与えてあげる」ものでもなく、被災者の自主的・自立的活動となります。まちづくり専門家や行政はその支援をすることが仕事です。

そのためのひとつの方法として、人々がどのような暮らし、地域、景観などを希望しているのか、どうあって欲しいと考えているかを短い文章にし、集約してみることがあります。例えば次のようなものが考えられます。
・漁港を復興し、水揚げをしたい
・港のまわりは賑わっており、住民、漁師、観光客が食事をできる店がある
・震災の被災者の鎮魂の施設と鎮守の森をつくりたい
・今までの集落の人たちと、これからもいっしょに近所で住みたい
 (漁業集落は例えばこんな感じに、海際の少ない土地を活かして住居を建て、仕事や生活の多くを共同で営んできました)
fishery village s.jpg

・港近くには建物は必要で、それは津波に耐えられるものとしたい
・水産加工業を再建したい
・農業を復興したい
・海の近くに住める選択肢を残してほしい
・自宅の近くで野菜を作りたい
・地域のまとまりを大切にしたい
・住宅は津波が来ない高いところを中心に建てる
・高台への避難路をきちんと整備することが必要。そしてそれを普段から使うようにする
・海から見た風景は、昔のように賑やかで、山は緑であってほしい
・季節の花が美しく咲いていてほしい

地域によって、多様な希望があると思います。
次に、その希望をできるだけ取り入れた絵を描いてみます。
たとえばこんな感じです。
(海から見た○○漁港と沿岸の漁業・農業集落)
20110622 FFV Restoration image 4ss.jpg

このような絵をまた住民や地元企業の人たちが見て、「もっとこうしたい」「ここは気に入った!」「これはちょっと違う」などの意見を出し合い、それに基づいて絵を描き直し、また討議します。このようにしてだんだんと意見の集約を図ります。希望が徐々に具体的になっていきます。

この最初のプロセス(ビジョニング)で多くの人たちの意識が共有化され、希望を持て、同じ目標に向かって進んでいけるようになれば、初期段階は成功です。

この手法はパターンランゲージと呼ばれます。上記の短文ひとつひとつが「パターン」であり、それらを紡ぐことで地域や生活、建築等のイメージが具体化され共有されていきます。最初は広い「地域全体」から始め、徐々に絞り込み「自分の集落」、「自宅の周り」、「自宅玄関の入口」などとなっていきます。
(ビジョンを少し具体化したまちのプラン 例)
20110623FFV plan 原図s.jpg

このように、初期段階で住民や地元企業が共有できるビジョンを持ち、それを実現すべく、より詳細な調査、土木や建築の設計、財源確保、権利調整などの実務に入っていきます。その段階でビジョンの見直しや、総論賛成各論反対的意見、具体的になるにつれて新たな問題噴出など、当然あると思いますが、その調整と前進がまちづくり専門家の仕事で、先に財源や制度の範囲内で考え始めるのとでは大きな違いがあります。希望を持ちそれが共有されていると実感できることは、大きな力になります。

このプロセスは、当初の時間はかかるかもしれませんが、結局は早道になり、100%ではないかもしれないがコミュニティの意向が尊重され、人々が希望と意欲を持って復興に参加し、多くの人たちが「ほっとするまち、帰りたいまち」になるのではないでしょうか。
そのことが大変重要と考えています。




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