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Great Urban Places in Asia 48 - クアラルンプール KL 3 [アジアの都市探訪]

ブキビンタン Bukit Bintang

 ブキビンタンはクアラルンプール都心部にあり、最もファッショナブルでにぎわいを見せている地区である。ブキは「丘」、ビンタンは「星」で、かつては泥川の合流地にあって星が満天に輝く丘だったものが、今日では幾百万の灯が地上に輝く都市になった。ブキビンタンの近くには自然森が保全されたブキナナス Bukit Nanasと呼ばれる公園があり、そちらは「パイナップルの丘」という意味。地名は地域の自然と歴史を思い起こさせてくれる。

 この地区に商業集積が始まったのは1950年代である。当時は混雑し、汚かったといわれる。1990年代に、クアラルンプールに拠点を持つ国際的なディベロッパーが再開発に乗り出し、用地を買収しブキビンタン通りJalan Bukit Bintangの一部を再編してブキビンタン・ウォークと呼ばれる広い歩道を整備した。当初はパリのシャンゼリゼのような開発イメージを持っていたといわれるが、今日の姿はシャンゼリゼではなく、ブキビンタンならではのものだ。

 クアラルンプールの公共交通機関として、中心市街地の主要部を通るモノレールが重要な役割を果たしている。モノレール「ブキビンタン」駅は地区のほぼ中心部、ブキビンタン通りとサルタンイスメイル通り(Jalan Sultan Ismail)交差点近くにある。モノレール駅からブキビンタン通りを西に進むと、右(北)側はショップハウスが連なり、左(南)側はブキビンタンプラザと呼ばれるショッピングセンターになっている。ショップハウスとショッピングセンターの混在が、まちの景観や使われ方として、この街の大きな特徴となっている。

 ブキビンタン通りのショップハウス側の歩道幅員は2~3m程度である。そこには植樹やごみ箱などがあり、歩行者通行量が多いため空間の余裕はあまりなく、歩きにくいところが多い。植樹はヤシ並木で、ショップハウスのファサードとあいまっていかにも東南アジアの都市らしい街並み景観となっている。ヤシは葉張りが小さいので歩道につくる日陰は小さく、歩行者としてはもっと日陰が欲しいところだが、歩道幅員が狭いのであえてそこに見合う樹種が選択されたのかもしれない。

 ショッピングセンターに接する歩道は、再開発の際に歩道が広げられ、歩行空間が広く取られている。その広い歩道の中にオープンカフェが数か所つくられている。それらの形態は様々で、大きなテントを張ったようなものや、壁と屋根がある本格的な建築もある。カフェの運営はその歩道に接する建物の路面店によるものと独立運営のものがあり、前者の場合は、オープンカフェにはテーブルと椅子のみが置かれドリンクや食べ物は店から運んでくる。

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ブキビンタン通り、大型テント状のオープンカフェ。

(続く)
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Great Urban Places in Asia 47 - クアラルンプール 2 [アジアの都市探訪]

ショップハウス(続き)

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リノベーションされたショップハウス。1、2階ともに商業利用され、区分ごとには全く異なる表情だが、全体としてのまとまりが保たれている


(続く)
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Great Urban Places in Asia 46 - クアラルンプール Kuala Lumpur 1 [アジアの都市探訪]

 クアラルンプールの「クアラ」は泥、「ルンプール」は川の合流点という意味である。通称KLと呼ばれ、初めはスズ鉱山の拠点都市として開発された。泥合流とは現代都市らしからぬ名前だが、今日では東南アジアでも有数の活力を持ち成長を続ける大都市で、非常に多様な人たちが合流する場である。
クアラルンプールはグリーントロピカルシティと呼ばれ、市内の随所に豊かな緑がある。広場や公園には巨木や熱帯性植物が生い茂っている。ヤシ並木の緑は、路上に木陰をつくるには実用的ではないが、様々な色彩や形が乱舞する建築ファサードを束ねる濃緑の帯となり、東南アジアらしい都市景観をつくりだしている。
 市域は244平方キロメートル、人口は177万人(2015)で、広域都市圏人口は724万人である。

ショップハウス Shophouse
 ショップハウスとはマレーシアはじめ東南アジアに多く見られる建築様式で、一般的には2~3階建ての「長屋」であり、その名のとおり1階は各種の店舗やレストランとして用いられる場合が多い。間口は狭く奥行きが深く、中庭や奥庭を持つ。間口が狭いのは間口幅に応じて課税額が決められたためと言われる。これは世界各地の商業地で共通してみられることである。

 2階以上は主に住宅で、区分ごとに所有権が異なる世帯が住む場合や、一体的に所有され寮などとして用いる場合がある。近年、伝統的で良質なショップハウスの価格は、経済発展に伴い高騰しているという。各区分を仕切る壁は防火壁としての機能も持っている。ショップハウスの連なりの長さは様々であるが、道路に沿ってカーブしながら延々と連なっているものもある。

 ショップハウスは16世紀から存在し、18世紀後半以降の英国植民時代にクアラルンプールほかマラッカ、シンガポールなどの都市で発展した。ショップハウスが連なって建てられた理由のひとつは、建築条例によって1階部分を5フィート(1.5m)以上セットバックし、そこを回廊とし歩行者の通行に用いたことである。これは、暑く雨が多い東南アジアでは理にかなうことだ。今でも回廊が付いているショップハウスが多いが、間口ごとに仕切られてしまい、通路としての機能を失い装飾化したものもある。

 ショップハウスは長い歴史を持つため、その構造やファサードの表現も多様で、各時代のショップハウスが街に残され使われていることが街の表情の豊かさにつながっている。ファサードの装飾や色彩はマレー、中国、ヨーロッパ、現代コスモポリタン文化などの影響を受け、年代別に混在あるいは融和し、独特で多様なものとなっている。構造は伝統的には煉瓦造や木造だが、近年のものには鉄筋コンクリート造もある。仕上げは、伝統的には白石灰で仕上げられたものが多いが、20世紀中ごろには様々なパステルカラーのペイントが広まり、原色の使用も多い。

 KL市内のファッショナブルな商業、エンターテインメント地区では、ショップハウスが区分ごとにリノベーションされている。ファサードデザインはさらに多様化し、ポストモダンあり、ガラスカーテンウォールによる現代調ありである。壁面や屋根には、大型でカラフルな広告やサインが多数取り付けられ、街並み景観を刺激しているが、広告物の幅は建物区分とほぼ一致し、取り付け高さもだいたいそろっているなど、ファサードデザインとほどほどの調和が保たれている。

 ショップハウスはかように様々だが、スケールと形態は元来の状態が保たれ、調和感がありながらも個性にあふれた場が作り出されている。それは、街が特定少数の事業者によって大規模・急速に建造されたのではなく、長い歴史の中で、数えきれない多くの人たちによって、その時代を反映した構造や装飾が用いられ、地元の知恵と技術によって少しずつ改修され、使い続けられてきた結果である。

 比較的近年に建設され、大型で上層階が店舗やオフィスとして用いられているものはショップオフィスとも呼ばれる。マレーシアでは20世紀後半以降、元来のショップハウスの枠を超えた大規模ショップハウスが都市の再開発や郊外開発で建設され続けている。

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ヨーロッパ調のファサードを基調とし、現代的な看板のあるショップハウス


(続く)
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Great Urban Places in Asia 45 - シンガポール Singapore 12 [アジアの都市探訪]

HDB高層住宅団地

 シンガポールでは、人民行動党 people’s action partyが1959年に政権をとった後、大規模な公共住宅建設を推進してきた。SITは組織改変されて1960年にHDB Housing Development Boardとなり、良質な住宅に対する高い需要に対応するため高層住宅整備を進めてきた。現在までに23地区に100万戸以上が整備され、さらに整備が進められている。

 その結果、似たような高層団地建築が並ぶ郊外地区が広がり、何万もの住民が2、3ベッドルームの集合住宅に住むことになった。現在、国民の約80%以上がHDB住宅に住み、持ち家比率は90%と高い。

 都市高速鉄道MRT - Mass Rapid Transitは住宅団地と都心部など都市内各地を結び、時間に正確で、運行頻度、乗車率ともに高い。一部地区ではMRTの補助的路線としてLRT - Light Rapid Transit が運行されている。LRTと一部のMRTは無人運転されている。

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高層住宅団地地区を走るLRTの車窓から

(続く)
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Great Urban Places in Asia 44 - シンガポール Singapore 11 [アジアの都市探訪]

チョンバルTiong Bahru

 シンガポールの公共住宅整備は1930年代に始まった。当時の植民地政府の一機関であるSIT Singapore Improvement Trustがアフォーダブル住宅の不足を補う事業を開始した。当初のSITのプログラムは中低所得層を対象としたものであった。戦前の最も重要な公共住宅整備事業がチョンバルTiong Bahruであり、当時の都市外延部、マングローブが生い茂る湿地であったところに建設された。最初の入居は1936年で、1941年までに784棟が建設され、人口6,000人に達し、マーケット、レストラン、小売店など33店舗が入居した。

 建物はほとんど4階建て以下で、Nayang中国南方様式と、当時ヨーロッパで流行していたアールデコ様式がミックスした様式であり、ショップハウスの改良型modified shopshouseともいえ、水平線の強調と丸いコーナーが特徴である。コートヤードや光庭もあり、プライバシーを保った現代的なアパートメントである。階段は半屋外の螺旋階段Spiral staircaseが多く、 色は白が基調となっている。

 住棟の配置は、オープンスペースを確保し、小規模のコミュニティ形成を図ったものである。当初は高級住宅地であり富裕層を主な対象としていたが、第2次大戦後は建物が増築され、徐々に中級層や行商人が住む混合コミュニティとなった。行商人を一元管理consolidateし営業許可licenseを与えるため、また住民に便利な買い物と食事の場を与えるため、1955年に地区の中央部に市場が設けられた。そこは今では商業専用棟となっており、1階には生活関連の様々な店舗、2階は大きなフードコートで各種のローカルフードが揃い、地域住民の生活中心になっている。

 1980年代には住民の高齢化が進んだが、90年代半ば以降、新しい地下鉄駅、住宅、商業施設がオープンし再開発事業や大規模改修が行われた。

 現在、建物は丁寧に修繕、維持管理されている。住棟は4階建てが基本。アールデコ調のシンプルなデザインで、外壁色は今も白でそろえられている。住棟間隔はゆったりして緑が多く、快適に生活できそうな環境である。地区の中央部にある住棟の一部はリノベーションされてハイエンドなカフェなどが入り、若い人たちを呼び込んでいる。建築の保全と再生によって、住民と来訪者がミックスした新たなコミュニティが生まれた。

 団地の一角には、シンガポールの各地に見られるコミュニティセンターがあり、幼稚園や学校などと一体的な運営がされているようであった。

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住棟をリノベーションしたカフェの店内からの眺め

(続く)
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Great Urban Places in Asia 43 - シンガポール Singapore 10 [アジアの都市探訪]

ホランドビレッジ Holland Village

 地下鉄MRT駅付近から、緑豊かな緩斜面を上る湾曲した街路に沿って、低中層の高級住宅街が連なる。1960年代から、中上流の欧米人向けに開発されたもので、今日でも多くの欧米人が住む。住戸タイプはバンガローbungalowと二戸一住宅semi-detached がある。駅に近いあたりには、1階がリノベーションされ大きな開口部を持ったショップ、ギャラリ、カフェレストランとなったバンガローが並ぶ。これらの住宅建築は1960年代当初の意匠が活かされ、壁面と窓枠は白でそろい丁寧に維持管理され、緑とのコントラストが美しい。それらによって高い住環境が保たれている。シンガポールにはこのような住宅地区はほとんどない。歴史的建築物として文化的価値も高く、街全体として保全する意義があるだろう。

 MRT駅周辺には、ショップハウス状の低層建築が連なったハイセンスなショップ、レストラン街やショッピングセンターがある。これらは住宅よりも後年、1980年代以降につくられたもので、住宅の良いイメージにつられて高級店、人気店が集まっている。MRT駅の開業はさらに新しく、2011年である。

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ホランドビレッジの2世帯1建物タイプの住宅。
1960年代のデザインが活かされ、丁寧に維持管理されている。


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Great Urban Places in Asia 42- シンガポール Singapore 9 [アジアの都市探訪]

アラブストリート周辺 Arab Street Neighborhood
 この地区は旧称カンポン・グラムKampong Gelamといい、ラッフルズがシンガポールに来る前から村があった。後年、シンガポールで最大のイスラム寺院スルタン・モスクSultan Mosqueが建てられ、現在ではイスラム色が濃い地域となっている。通りによって特徴が分かれ、テキスタイル店が多い通り、マレー系などのレストランが多い通り、雑貨店が多い通り、住宅街などがある。
シンガポールは民族的には華人系が70%強を占めるが、マレー系やインド系住民も多く、欧米などからのビジネス滞在者も多い。小さな国だが多国籍多民族が暮らしており、大規模な商業系再開発地区や高層公団住宅が多い中にあって、民族色の濃い街も個性的に存在している。

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アラブストリート近くの静かな住宅街。観光客が多いストリートのすぐ隣にある。
正面はスルタン・モスク

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Great Urban Places in Asia 41 - シンガポール Singapore 8 [アジアの都市探訪]

チャイナタウン Chinatown

 世界どこでもチャイナタウンには密度と活気、庶民性、エネルギーがある。シンガポールも例外ではない。中国系民族は、シンガポール最大の人種グループでもある。
 シンガポールのチャイナタウンは地下鉄駅前にある中核的なショッピングセンター・住宅複合施設と、その周囲にあるショップハウス街区で形成されている。ショッピングセンターはオーチャードロードやマリーナベイのものとは全く異なる庶民の日常的なもので、大変な活況を呈している。
 チャイナタウンは「牛車水」cow cart waterという別名で知られている。これは、チャイナタウンの水は、19世紀には動物に引かれた車によって供給されていたことに由来する。この地には、14世紀にすでに中国人の集落があった。シンガポールが創設された1819年から数十年程度以内でこの地に人口集中が進み過密状態になった。ラッフルズは、中国人がこの地域における主要な民族になることを見通し、シンガポール川河口の南西部一帯を中国人の居住に供することとした。それによりこの地域がチャイナタウンとして確立することとなった。チャイナタウンの開発が本格的に始まったのは1843年、行政が土地を取得あるいはリースを受けて住宅やショップハウスの建設を開始してからである。1960年代になると、HDBが主導して住民の移住を進めたため、過密問題は緩和されたが、現在でも高密度な状態が続いている。
 ショップハウス街区の一部は観光客向けの土産店、飲食店街になっている。そこには華人の生活があふれているが、マレーやインド系の人も少なくない。ショップハウスは元々の形状や装飾のまま赤、青、茶、黄色、緑、ピンクなどに塗られ、中華風の看板が取り付けられている。基調色は白か淡いパステルカラーが多い。店舗はみちに向かって大きく開き、庇が連続して掛けられ、土産物や椅子テーブルはみちにせり出し、路上には紅白提灯がぶらさがるなど、すっかり中華風にアレンジされ馴染んでいる。元来の窓廻りのデザインは、ヨーロッパの影響を受けていると見られるものも多い。
 現在は、チャイナタウンの大部分は国の歴史遺産地区national heritage sitesに指定され、保存対象となっている。

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歴史的建築ショップハウスが中華風やエスニック風に装飾され、独特の雰囲気を生み出している。

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Great Urban Places in Asia 40 - Singapore 7 [アジアの都市探訪]

オーチャードロード Orchard Road

シンガポールの豊かさを代表するファッショナブルな通りで、シンガポールのメインストリートといってよい。大規模でハイエンドのショッピングセンター、ブランドショップ、ホテルが並ぶ。長さは3キロメートルにも及ぶ。大きな街路樹の下を、世界各地からの観光客が行き交う。街路の全幅は約30メートル、歩道幅は6-7メートル程だが、沿道の商業施設が広いセットバックを取っており、歩道と一体化した広く連続した歩行空間が設けられている。それでも、アクティビティの密度は高い。
街路樹は高く、葉張りは大きい。葉の密度がやや低い常緑樹で歩道を天蓋のように覆い、熱帯都市らしい雰囲気を醸し出している。自動車レーンは5車線あり、一方通行とされている。

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オーチャードロード。広い歩道に高木の街路樹が続き、世界から裕福な観光客が集う。
沿道にはブランド店、大型ショッピングセンターが連なる。

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Great Urban Places in Asia 39 - シンガポール Singapore 6 [アジアの都市探訪]

マリーナベイ Marina Bay

 シンガポールはアジア、世界の金融・ビジネスセンターとして成長を続けている。1970年代から、シンガポール政府とURA urban redevelopment agencyはマリーナベイの一部を埋め立て、中心部の拡張を図ってきた。都心部にはすでに超高層ビルが林立しており、さらなる開発が内湾周辺のマリーナベイ地区に展開されている。2017年時点では大規模な商業複合施設と公園がオープンしている。
 3本のタワーが頂部の船でつながったかたちのマリーナベイサンズは2010年オープンで、カジノ、高級ショッピングセンター、ホテルの複合商業施設である。「未来都市」を実現したようなイメージで、現代シンガポールの代表的なアイコンとなった。この構想、規模、ダイナミックな形状と存在感には驚かされる。ディテールデザインはモダンでシンプルに見えた。
 街区と建築のスケールは巨大で、平面的にも立面的にもヒューマンスケールをはるかに超えている。遠景としてもインテリアとしてもダイナミックで興奮を覚えるが、毎日ここを歩くとしたら退屈かもしれない。地下鉄駅までの距離は長く感じられる。
 これらの施設の運営には非常に高度の維持管理とプログラムが必要になる。徹底して管理された人工的空間であり、世界トップクラスの経済力と技術力があってこそ実現される空間だ。内湾のマリーナベイに面する広々としたウッドデッキは、住民や観光客など多くの人々の集いの場となっている。シンガポールは一年中暑いので、夜に集える屋外空間は人気が高い。このデッキは大規模商業施設の一部だが無料で誰もが使えるパブリックスペースであり、現代シンガポールの夜を体験し楽しむ場となっている。

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マリーナベイサンズ前の大型ウッドデッキ。多くの人たちが集う。
水上ではレーザービームも交えた光、水、炎、サウンド、映像のショウも行われる。

 1970年代から1980年代の終わりにかけ、シンガポールでは現代建築が都市開発の主役となった。初期のタイプの商業超高層建築が今も残っており、後年にはポストモダン様式の超高層も建てられ、都心部は超高層建築の見本市のようになっている。2016年に、シンガポールで最も高いタワーであるTanjong Pagar Centreが建設された。それまでは建築の最高高さはそれ以前に建設された3つの最高タワーにあわせて280mに制限されていたが、この建築はそれを超える290mであった。近年では、シンガポールのみならず世界の都市で目立つ建物distinctive structuresが志向されるようになり、それによって都市のイメージを国際的に高める競争がおこっている。その代表例がmarina bay sandsであるといえよう。

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