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Great Urban Places in Asia 44 - シンガポール Singapore 11 [アジアの都市探訪]

チョンバルTiong Bahru

 シンガポールの公共住宅整備は1930年代に始まった。当時の植民地政府の一機関であるSIT Singapore Improvement Trustがアフォーダブル住宅の不足を補う事業を開始した。当初のSITのプログラムは中低所得層を対象としたものであった。戦前の最も重要な公共住宅整備事業がチョンバルTiong Bahruであり、当時の都市外延部、マングローブが生い茂る湿地であったところに建設された。最初の入居は1936年で、1941年までに784棟が建設され、人口6,000人に達し、マーケット、レストラン、小売店など33店舗が入居した。

 建物はほとんど4階建て以下で、Nayang中国南方様式と、当時ヨーロッパで流行していたアールデコ様式がミックスした様式であり、ショップハウスの改良型modified shopshouseともいえ、水平線の強調と丸いコーナーが特徴である。コートヤードや光庭もあり、プライバシーを保った現代的なアパートメントである。階段は半屋外の螺旋階段Spiral staircaseが多く、 色は白が基調となっている。

 住棟の配置は、オープンスペースを確保し、小規模のコミュニティ形成を図ったものである。当初は高級住宅地であり富裕層を主な対象としていたが、第2次大戦後は建物が増築され、徐々に中級層や行商人が住む混合コミュニティとなった。行商人を一元管理consolidateし営業許可licenseを与えるため、また住民に便利な買い物と食事の場を与えるため、1955年に地区の中央部に市場が設けられた。そこは今では商業専用棟となっており、1階には生活関連の様々な店舗、2階は大きなフードコートで各種のローカルフードが揃い、地域住民の生活中心になっている。

 1980年代には住民の高齢化が進んだが、90年代半ば以降、新しい地下鉄駅、住宅、商業施設がオープンし再開発事業や大規模改修が行われた。

 現在、建物は丁寧に修繕、維持管理されている。住棟は4階建てが基本。アールデコ調のシンプルなデザインで、外壁色は今も白でそろえられている。住棟間隔はゆったりして緑が多く、快適に生活できそうな環境である。地区の中央部にある住棟の一部はリノベーションされてハイエンドなカフェなどが入り、若い人たちを呼び込んでいる。建築の保全と再生によって、住民と来訪者がミックスした新たなコミュニティが生まれた。

 団地の一角には、シンガポールの各地に見られるコミュニティセンターがあり、幼稚園や学校などと一体的な運営がされているようであった。

チョンバル.jpg
住棟をリノベーションしたカフェの店内からの眺め

(続く)
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