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街路計画の現状と方向性(特に郊外住宅地)~書評 [アーバンデザイン]

Michael Southworth と Eran Ben-JosephによるStreet and the Shaping of Towns and Cities(1997 McGrow-Hill)は、主にアメリカの郊外地域を対象とした道路計画方針の推移、それによるコミュニティへの影響、これからのあるべき道路計画などについて述べた本である。

近年のニューアーバニズム計画理念による代表的地区としてケントランズとラグーナウェストが挙げられ、それらと20世紀初頭の路面電車時代に開発されたエルムウッドの街路形状、交差点数、街区数などが比較されているが、結果としてどうなのかはあまり判然としない。

自動車が普及した後の道路計画に関する今日の技術基準は自動車を円滑に通すことを最優先課題としており、それによっていかに多くの土地が浪費され、道路が単一機能化され画一的になったかが指摘されている。それによるメリットもあるが失ったことも多い。(なお、道路の社会的便益と費用については、宇沢弘文が「社会的共通資本」において、より大きな視点から述べている)。

これからの道路計画及び利用の望ましい方向性として、以下が挙げられている。
1. 子どもたちの遊び場、大人たちのレクリエーションの場としての活用を含み、道路の多目的利用を進める。
2. 住民の快適性、安全性向上のために道路空間を計画し、マネジメントする。
3. つながりがよく、面白みのある(住民にとって)歩行者ネットワークをつくる。
4. 沿道住民にとって利便性を確保したアクセスを提供し、交通を円滑化する。ただし通過交通を促進しないようにする。
5. 街路を機能によって区分する。
6. 街路のデザインは地形や歴史的環境に合わせる。
7. 街路面積は必要最小限にする。

これらは、Jane JacobsやAppleyardの論点と共通点が多い。これらは基本的な方向性としてほぼ確立されているのではないか。ではどうしてこれらがなかなか実現されないのか。既存の技術基準がかたくなと言えるまでに変わらない理由を改めて検証し、対応策を講じる必要がある。

これらはアメリカについて述べたものであるが、日本でも共通のことが多い。ただし道路面積や幅員についてはアメリカのほうがかなり大きい。アメリカの郊外住宅地における標準的な幅員は50~60フィート(12.7 - 15.4m)、道路率は最大で50%にも達するが、日本でのそれは6m程度(新規開発地区の地区内街路)である。道路にトラフィック(通過交通)機能だけではなくアクセス(駐停車)機能を持たせるか否かによる影響も大きい。

american suburban street.jpg
今日の典型的な郊外住宅地街路(カリフォルニア、撮影:鈴木俊治)

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